エキスパートへの道


目次

片足シーソーターン&ドルフィンターン
スキーのたわみを引き出す滑りとは!
足元と大腿部の運動で差をつけよう!
エキスパートの小回りを身につけよう!
小回りのターン弧 整地とコブの一致!

片足シーソーターン&ドルフィンターン
 ・エキスパート・・・
心地よい響き、多くのスキーヤーにとっても目標となるスキーヤー・・・
ゲレンデに、シュプールに、心に残る何かを刻みこんでいく・・・
そんなスキーヤーになれたら・・・


 ここでは私なりにエキスパートスキーヤーに求める立体的な滑り(私なりの言い回しですが)を考えてみましょう。

 「ニャンニャン流(笑)エキスパートへの道」で意識して欲しい3つの軸について考えてみましょう。
スキーを上達する上でこの下記に挙げる3つの軸を意識して滑るだけで違った滑りになります。
特に左右軸を意識して滑るとこで、多くのスキーヤーが立体感溢れるアクティブな滑りになります。


上下軸@上下軸
 雪面に置いたスキーに焼き鳥に使うような串を真上から刺すイメージを持ってください。
焼き鳥の串が上下軸になります。串を刺したスキーを左右に捻る・・・いわばスキーの進行方向に対してスキーを横向きにする。(回旋)する軸です。板はこの軸を中心に竹とんぼのような動きをします。

※左図はスキーを上から見た図です。


前後軸A前後軸
 スキーのトップからテールに串を刺したイメージを持ってみてください。
貫通した串が前後軸です。スキー板を“角づけ”する軸と考えてください。板は船の横揺れのような動きをします

※左図はスキーをテールから見た図です。

前後軸B左右軸
 スキーの横方向に串を刺した感じ。公園のシーソーの支点と考えるとわかりやすいでしょう。


※左図のパイプの部分が軸です。




 ここで注目したいのは3番目の左右軸です。
回旋を主体とした上下軸と角づけを主体とした前後軸を意識したスキーヤーは多くいますが、(近頃は前後軸、つまり角づけを意識したスキーヤーを多く見かけます。)左右軸を意識したスキーヤーの滑りはほとんど見かけません。
上図のシーソーのイメージ、これこそがエキスパートへの道のカギを握っていると私は考えます。
スキーをシーソーのように動かし力を雪面に伝えることが出来たならそれは紛れもなくスキーの性能を生かした滑りとなることでしょう。
※このコーナー『エキスパートへの道』もあくまでニャンニャン流の考えで進めていますので、ご了承ください。

 ここにご紹介する片足シーソーターン(オリジナル)&ドルフィンターン(イルカが水面を跳ねるように滑る)はいずれも大回り(片足シーソーターン)、小回り(ドルフィンターン)で左右軸を意識した、練習メニューとしては、難易度の高いメニューです。この二つができるスキーヤーは、そう紛れ もなくエキスパートスキーヤーです。

 では、私の先輩綾小路髭麻呂さんの滑りを見ながら解説して行きましょう。
3次元的に滑ることができると、よりアクティブで立体感のある滑りをすることができます。
ここでは大回り用に片足シーソーターン(オリジナル)と小回り用にドルフィンターンを見ていきましょう。
いずれもポイントは公園のシーソーのような板の動きです。

練習バーンは初め緩やかな斜面でゆっくりやってみましょう。

片足シーソーターン

 
 右の図をご覧ください。
実線が左足(雪面に着けた足)、点線が右足(雪面から浮かせた足)を示しています。
A、B、C、Dのポジションで浮かせた足の様子を解説していくことにしましょう。

右足を浮かせること、いわゆるシーソーにすることによってTOPとテールに対する圧のかけ方を自分自身で理解することができるようになります。





 下の写真Aは中斜面片足シーソーターンで内側のアウトエッジを捉えている部分です。体軸に注目してみてください。
内足の頭から足元へのパワーラインができているのがわかると思います。
右足は雪面から完全に浮かせていますがテールを浮かせてトップが下がります。
トップコントロールがされています。
右足を浮かせることによって自分でポジション確認することができると思います。
ターンは谷回りの部分です。

A



 下の写真Bは谷回りから抜け出し山回りに入る部分です。
重心がスキーの後ろに来てスキーを走らせる、テールコントロールの部分です。
ここでも右足がセンサーの変わりになりTOPが浮き重心の移動がテール部分に移動した事がわかります。
内足主導のターンの様子がわかるかと思います。


 この写真Cは切り換えが終わって次の谷回りの部分の始まりのポジションです。TOPが下がり左足のTOPコントロールがされているのが良くわかると思います。


 下の写真Dはマキシマム(一番圧のかかる部分)の部分の写真です。この状態でも右足は浮いています。
 D


ドルフィンターン

今度は小回りを見てみましょう。
 この写真はドルフィンターンを行っている写真です。
ドルフィンターンとはイルカが水面から飛び出すことをイメージしたターンです。
小回りでは立体感を出す為にもこのイメージを持つとTOP&テールコントロールが上手くいくでしょう。
スネの筋肉を使いTOPを持ち上げるスキー操作をしています。

完全に雪面からスキーが離れているのがわかると思います。イルカが海面を飛び跳ねるイメージですね。


 足首を使ってTOPを下げる動きをしています。
イメージとしてはスプーンでアイスクリームをすくいとるイメージ。
コブ斜面を意識した足首の使い方でもあります。
ロングターンは重心を前後させて板をシーソー的に操り、ショートターンは足首を使ってシーソ−的に操る、そんなイメージになります。
運動が出来ているかの確認、あるいはこれ自体を練習として試してみて下さい。


「エキスパートへの道」初回は3つの軸、特に左右軸について考えてみました。左右軸の意識、もうみなさんはエキスパートへの仲間入りです。


スキーのたわみを引き出す滑りとは

 カービング時代を迎え益々スキーの性能を引き出して効率よく滑ることが大切になってきました。
スキーヤーの雪面への力の掛け方の違いでスキーの走リ方が随分変わってきます。
ここではカービングターンの中でも谷回りで板をたわませて、その後の山回りではそのたわみのエネルギーの解放で走らせるテクニックを紹介します。

 左図の矢印をご覧ください。ターン中の圧のかけ方を矢印で示したものです。
これは理想的な雪面への圧のかけ、方掛ける方向を描いたものです。
圧をかける方向としては内側から外側へ、外から圧を貰うのではなく自分から雪面へ働きかけるようにします。
これにより谷回りで板がたわむと同時に走ります。ただし踏み込み具合は雪質や板のRや固さ、求めるターンサイズにより加減します。

矢印のイメージでスキーをたわませてみましょう。


今回も舞台を第一回「エキスパートへの道」石内丸山スキー会場から会場を移しエキスパートスキーヤー綾小路髭麻呂さんの滑りを元に解説していきましょう。


この写真は小回りで滑っているものですが、内傾角と背後に写っている少年の位置に注目してみてください。

@


A

1ターンの小回りにもかかわらず横への移動距離が非常に多いことがわかります。上の写真の少年が動かずに立っていますから、いかに内傾角が大きく左右移動が多いかがわかると思います。ここでの力の加え方、左右への移動、内径角がスーパーショートターンへの道となります。


 

重心のイメージとしては上の図のイメージを持つと良いかもしれません。
重心の移動を左、滑るイメージを右としました。横方向の移動を意識した(以前もお話した2軸のイメージ)滑りです。
カービングショートターンを行う上で横方向への重心の移動は非常に大切です。
横方向への移動に加えて重心をフォールライン方向にも落とすことによりスキーに角がたち内傾角が生まれます。内傾角を作ることによって、より雪面への圧を感じることができます。ターン前半(谷回り)でいかにこの内傾角が出せるかがエキスパートへの道ですね。


 今度は大回りを見て行きましょう。
この写真は@の写真と同じ谷回りの部分の写真です。この谷回りの部分で既にこれだけの内傾角がついています。
すなわちこの時点でもうスキーをたわませていると言えるでしょう。
このポジション作りが肝となるのです。外スキーに対する力の掛け方をイメージしてみてください。

B




フォールライン(最大傾斜線)にからんだ写真です右手がつきそうですよね。下から見るとかなりの迫力です。
このときの内脚の意識は内脚に縮むのではなく内脚を胸に引きつけています。

C


この写真はニュートラルポジションです。エッジが開放されてフラットな踏みつけをしています。
確実にこのポジションを作れないと次のターンへスムーズに入ることができません。
同時にカービングターンを行うポジションとしてここで低いポジションであることが大切です。ここから外側へスキーヤー自らの力で圧を加えていきます。

D




切り替えと同時にこのポジション(@と同じポジション)に戻ります。いかに早くこのポジションを作れるかがカギですね。

E



このスキーへのたわみ&内傾角がエキスパートへの道に続きますね!!


足元と大腿部の運動で差をつけよう!
  2005年進化し続けるスキー技術、マテリアルの変化と共にスキー技術も変わってきます。
下の写真は綾小路髭麻呂さんのロングターンです。
写真@のような運動によってできたシュプールがAの写真です。
無駄のない2本のラインが綺麗に描かれています。

 では、このようなシュプールを描くにはどのような運動を行えばいいのでしょう?

@




上記写真コマ拡大写真


1コマ

2コマ

3コマ

4コマ

 右足大腿は1コマ目で寝かされていて、2コマ目で少し起き、3コマ4コマ目で大腿がグッと起きて腰が前に出てきています。
つまり、大腿を起こすことで腰が前方に出てくるのです。
しかし、同時に立ち上げた大腿の反対側の大腿は逆に寝ていることにも注目して下さい。
大腿の立ち上げと寝かせは左右交互に行います。
内脚大腿を寝かせるときは自分から縮むのではなく、内脚を胸に抱え込む=引きつける
意識で行うのがポイントです。



A


 まず大腿部の動かし方に注目してみましょう。
Bの写真は大腿を寝かせた時の写真です、ストックと体の位置関係がわかるかと思います。
雪面から一番圧を受けた姿勢です。かなり大腿部が寝ています。


B



この写真Cは切り替え時の様子を解説した写真です。マキシマムを迎えた上との大腿の違いに注目してみてください。
スクワットをイメージしていただければわかりやすいと思います。

C


 近代のカービングを駆使した滑りは大腿部にも凄く負荷をかけることになります。
この大腿部の運動をするかしないかで自分から働きかけるアクティブターンと受身的な受動的なスキーに乗せられているターンになるかが決まります。連続写真の髭麻呂さんの滑りからも運動の様子がわかるかと思います。


続いて足元でスキーを走らせる感覚ですが、ターンの最中に足元を前に動かす動きを行うことによってスキーに推進力を与えることができます。


D



E



Dで押し出したスキーをEで戻す、ターンの最中はこの送りだしと戻しの連続です。
このスキーを戻す感覚、引きつける間隔を習得することによってスキーを自分の支配下におくことができるようになります。平滑な緩斜面でゆっくり習得することが大切です。


エキスパートの小回りを身につけよう!

エキスパートの小回りは足首を使っているように見えますが、左写真のようにすねでブーツのベロを押したりすねを立てたりするような使い方ではありません。足首のスナップを使って板を抜くことはありますが、極端にすねを押しつけたり立てたりする動きは個人の感覚にもよりますがあまりないと思います。
その場で立ってこのすねの動きをすれば確かに足裏の荷重点は前後に移動しますが、板の性能を生かすために大きな弧を描く場合は谷回りでトップが体から遠ざかる事が必要ですが、谷回りでヒザを前に入れると板は体の真下に留まってしまいます。

そこで、板の描く弧に沿ってブーツを押したり引いたりして板を前後的(シーソー的)に使います(左写真上段)。切り換えでブーツを自分側に引きつけるようにしてトップを踏み、ターン後半はブーツを板の進行方向に後押しかかと側に荷重するように送り出します。写真では板がシーソー的に動いている様子が分かります。結果的には体の横から前方に向かってブーツで半円を描く感覚になります。
ブーツの内面感覚を示したのが下の写真ですが、谷回りでブーツを引きつけますがそのときの足裏感覚は指を反らせるのではなく指をブーツのインソールに押しつけるイメージです。これによりトップ荷重を保ったまま板のトップが体から離れていくことが可能になります。
ターン後半はこの足裏感覚を保ったままブーツを送り出して板を走らせると共に切れ上がらせ、結果的にかかと荷重になります。

この感覚の滑りを斜め前から撮影しました。1コマ目はかかとに抜いたため明らかに板に対して荷重が後ろになっています。ターン後半の板の軌道に沿った送り出しのため板も十分切れ上がっています。
2コマ目は自分側にブーツを引きつけトップ荷重に持ち込んだところです。足指はインソール(雪面)にギュ〜っと押しつけているので見た目以上にトップを踏んでいます。
1コマ目から2コマ目に至る過程でブーツを引きつけながら重心を谷にスライドさせるように落としていきます。

前方から見た同じ意識の小回りです。2コマ目で重心の落とし込みがやや不足していますが、1コマ目の左足のブーツを後半に向かって送り出しているためその部分の板の走りが表現出来ます。
送り出して走らせたらその次の瞬間にはブーツを引きつけ2コマ目のニュートラルなポジションに戻すことが必要で、送り出しと引きつけはワンセットで自動運動化するまで滑り込むことが必須です。
ちなみに写真の小回りからもう少しスタンスを広げポジションを低くしてベンディング要素を強くすればその分板が遠くを回り角付けも増してカービング要素がより強く出ます。
この滑りは小回りなのですが体軸を使って板をたわませている事に注目して下さい。3コマ目の谷回りで板に角付けが生まれる部分、5コマ目でトップが下がり板全体が雪面にへばりつく様子、板の動きを見てシュンシュンと言う音がイメージできれば最高です。


小回りの弧 整地とコブとの一致
 ターン後半板が走り横スペースを広く使うようになると、その延長で当然谷回りスペースも広く取るのでその間落差が生じます。結果としてやはり弧が大きくなります
板が走ることによって弧が大きくなると言う本質を知らずに弧の大きさだけをエキスパートの真似をすると、大きな弧を描く間にやることが無くなって単純に間延びした小回りになってしまいます。
板が走る小回りが出来るようになると弧が大きくなりますが、今度はそのような弧を小さくしていくとチョコマカした小回りであっても板の躍動感が出てきます。
小回りの時に上の写真のようにブーツの中で足指を反らしたときと、右の写真のように足指をインソールに思いっきり押しつけたときでは滑りのタイプが全く異なってきます。
まずは左の写真のように足指を反らせて板のトップを持ち上げて板を左右に振ってみます。すると、板のトップはフラフラします。
一方、右の写真のように足指でインソールをつかんで同じ事をすると今度は板のトップのコントロールが容易になります。
特に足指でインソールをつかむようにしたときの感覚としては、床のタオルを足指でつかんでたぐり寄せるような感じにしてみて下さい。このような力の使い方はコブでトップを下げていく板の操作に直結します。
例えば、その場で椅子に座って足指で遠くの床に置いたタオルをたぐり寄せてみて下さい。指先は床に強く押しつけます。そこから一瞬で足を床から浮かせると、足指がクッって下がるのが分かるはずですが、これはそのままコブでトップを下げる動きです。つまり、滑り出す前に足指をインソールに押しつけてややかかとを後ろに引いてから滑り出します

左の写真は撮影の便宜上片足ですが、写真では板のトップを跳ね上げています。実際は両足でトップを跳ね上げるのですが、このときのイメージは前述した押す引く小回りの後半の押した局面と思って下さい。
トップを跳ね上げる動きを両足で行い、そのときに足指を反らせたりインソールに押しつけたりしてやってみると、インソールに押しつけた場合は着地後かかとが後方に引かれてトップが雪面に押しつけられる感覚が味わえるはずです。

押す引く小回りをやると、切れを保ったまま後半弧が切れ上がりますが、そのイメージが左の図です。トップを上下に使い、しかも弧が切れ上がるので板の動きは3次元的(立体的)になります。
仮に左の図のように立体的な小回りで同じコース(ライン)を何度も滑り、次第にバーンが掘れて行ったとすれば、結果的にハーフパイプをくねらせたような溝コブができあがります。


次に、写真のような急斜面の溝コブを見てみましょう。
左写真は斜度30度を超える春の溝コブですが、図の青い点の部分を目で追うとかなり深い凹凸のライン(縦ライン)になることが分かります。
一方で写真の赤いラインを目で追うとちょうど上の図の黄色いラインの凹凸と全く同じであることが分かりますし、コブの縁を通過するのでコブの凹凸の高低差も少ないです。
赤いライン取りはリズムもゆったりしてショートカービングの性能にマッチしたラインですが、近年言われるバンクラインです。

つまり、押す引く小回りで板のトップを上下的に操ることが出来るようになると溝コブやコブのバンクラインを滑ることが非常に楽になり、整地の小回りの感覚そのものでコブを滑ることが可能になります。
ただ、このバンクラインもズラシで滑るパターンから切って滑るパターンに発展します。

バンク滑りをもう少し具体的に見ていきます。今自分が1のコブに居るとして、今から滑っていくコースは青い線です。視界には3のコブのバンクが飛び込んでくるので多くのひとは視界に入った3のコブめがけて、つまりAの方向に体を落とし込んでいくことがおおいですが、それだと3のコブにぶつかって衝撃を受けてしまいます。
Aの方向に体を落とし込むのではなく1のコブのバンクを通過しながら十分板を切れ上がらせBの方向に体を運びます。イメージで言うと一つ斜め後ろの2のコブの裏側に張り付くようなライン取りです。結果的に1のコブからいきなり3のコブに行くのではなくいったん2のコブを通過してから3のコブを通過します。
こうすることでコブを巻き込むようなライン取りで滑ることが可能になり、体への負担も少ないライン取りです。ただし、縦に攻めるライン取りとは全く異なります。