矢口のオールナイトニッポンの中で一般公募されたハロプロラジオドラマのプロットとして応募した作品。
応募要項は以下のようなものでした
『ハロプロメンバーが出演するラジオドラマのプロット募集
テーマはあなたの地元・あなたの街を舞台にした物語。賞金80万円。1000文字以内』
で、ごっつぁんのミュージカルに続き落選したので、今回もせっかくなので載せておきます。
これは2作品応募したうちの片一方で、僕的にはどちらかというと気に入っている方のものです。
4人の幼馴染の女の子達の物語。
物心ついた時からずっと一緒にいた4人だった。
だけど田舎の高校を卒業し、都会に出ていってみんなバラバラになってしまった。
そんな彼女達が3ヶ月ぶりに再開する。そんなある梅雨の夜の話。
里沙はデザイナーを目指して大阪の専門学校に通っている。
あさ美は東京の大学に進学した。
愛は京都の大きな会社でOL生活。
麻琴はただ1人地元に残り、家業の花火作りを手伝っていた。
里沙が6月も後半になったある日突然、地元で会おうと言い出した。
都会に出た3人にとってはまだ学校や仕事のある時期だが、みんな週末だけということで帰ってきた。
そんな土曜の夜。彼女達は昔からの遊び場である近くの水田地帯に出かけた。
そこは彼女達がよく蛍を見にいった想い出の場所。梅雨の今ならまたたくさんの蛍が見れるはず。
だけど。
そこには蛍はいなかった。
麻琴曰く、
「5月にこの辺りの小川をコンクリート工事しちゃったから、きっとそのせいだよ。蛍は川に土がないと生きられないんだ」
それでも必死に蛍を探す里沙。見つけないと大阪に帰れないと言って。
里沙は悩んでいた。都会の生活に慣れる事が出来ず、デザイナーの勉強もうまくいってなかった。クラスの中で自分1人だけが才能がないように思えた。
だからみんなに会いたかった。そして自分がデザイナーになりたいと思ったきっかけである幼少の頃見た夜空を舞う蛍の群れをもう1度見たかった。自分を勇気付けたかった。
里沙の告白に、みんなも蛍を探し出す。そしてそれぞれも抱えていた悩みを打ち明ける。
あさ美は東京で孤独だった。知り合いもいないし、引っ込み思案で友達もできなかった。いつも1人だった。
だからずっとみんなに会いたくてしょうがなかった。
愛は先輩社員との恋愛に悩んでいた。その先輩にはもう家族があった。でも本気だった。
麻琴は毎日が退屈だった。自分1人だけがこんな田舎町に取り残され、あまり興味のない家業を手伝う日々。でも一人っ子の彼女にはそれしか選択肢がなかった。都会に出て自由にできる3人が心底うらやましかった。
それぞれの想いを共有しながら、4人の蛍探しは続いた。でも、見つからなかった。
「ちょっと待ってて」
麻琴がそういってどこかへ行った。
そしてしばらくして戻ってきた麻琴の手には4本の線香花火が握られていた。
「蛍の代わり。飛ばないけどね」
そう言って線香花火に火をつける。
線香花火がはなつ光が4人の顔を輝かせる。
4人ともなんだかがんばれそうな気がしてきた。
「私達も輝かなくっちゃね。自分の力で」
言ったのは里沙だった。
やがて線香花火はその光を落とした。
「さぁ帰ろっか」
「うん」
4人はもといた場所に背を向け、家に向かって歩き始めた。
彼女達は気付かなかったけれど、その背後で1つの光の点が空に上って行った。
(終わり)
◆一緒に郵送したあとがき。(一部修正)
私の育った家は、いわゆる”ど田舎”にあります。
小学校はずっと一クラスしかなく、まわりは田んぼと畑ばかり。一番近くの駅まで自転車で1時間。そんな場所が私の故郷です。
今回のプロットは、そんな私の地元を思い出しながら書いてみました。
私が子供の頃には、梅雨には本当にたくさんの蛍を近所で見る事が出来ました。
無数の蛍を捕まえて来て、自分の部屋にはなしてちょっとしたプラネタリウムを作ったりしたことも思い出に残っています。
しかしながら、私が東京の大学に進学した年、その一体でちょっとした宅地造成が行われたのですが、すると私がよく蛍を見に行っていたその場所ではまったく蛍が見れなくなってしまっていました。
あれだけたくさんいたのが、それこそたったの一匹もいなくなったのです。
蛍は、『美しい水』『えさ』『水辺の土』のどれか一つでも失うとたちまち姿を消す非常にデリケートな生き物なのだそうです。なんとなくショックでした。
私の地元は、今もどんどん変わっています。コンビ二も最近ついにできたそうです。
でもきっと変わらないものもある。それはそこで得た思い出や、そんな思い出を共有できる友達。
失うもの、生まれるもの。変わるもの、変わらないもの。
それら全部を受けとめながら前向きに生きていくことの輝きみたいなものが、うまく話にこめられるといいなと思って書きました。
そしてもうすぐ四月。出会いの季節であるとともに、別れの季節です。これから大きな別れを迎える人達の心に届く物語になればいいなと思っています。
◆今このページ用に書いたあとがき。
普通。
普通過ぎるね、はい。
実際に合格したプロットのうちの一つの内容が、ソフトボールの球がUFOにぶつかって宇宙人が・・・・とかいうもののようなので(今分かってるのはその一つだけ)、やっぱそういうインパクト勝負でいくべきだったのかな。ラジオドラマだから、叙情感のあるものがいいかなと思ったのだけど。ま、他の合格した作品も全部見てみないとわからないけどね。
でも、ごっつぁんのミュージカルの時の反省をいかせてなかったというのは今なんとなく思う。きれいにまとめるってところを僕はつい頑張っちゃうのだ。なので、プロットっていうよりも脚本に近づけてしまって、結果訴える要素が文字数的に少なくなってしまう。実際に脚本をかくであろう人の想像力も阻害してしまうというか。
役名として五期メンバー4人をそのまま使ったのは、『それおもしろいかもね』ってスタッフに思わせるというあざとい戦略がありました。で実際、冒頭に述べた合格した作品のキャストは、高橋、紺野、麻琴の3人になってるわけだから、これは作戦としてはいい作戦だったんだろうな。まぁだめだったから意味ないんだけど。
あと、一緒に郵送した『あとがき。』
恥ずかしいね(^^;
恥ずかしずぎてのせるの辞めようかと思ったけど、まぁいいやと思って載せておきました。
また、チャンスが欲しいなぁ。その時は、また懲りずに頑張るぞっと。夢は見なけりゃ始まらない。
(あとがき おしまい)