「M」
第7章 side-A
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矢口が姿を消した部屋はがらんと静まり返っていた。
人の姿はなく、ただ電源を入れっぱなしのPCからの静かな機械音のみが響き、モニターの明かりのみが環境光となっている。
やがてモニターに軽くノイズが混ざり始め、それは程なく激しいノイズとなり、画面がほとんど読み取れなくなるまでになった。
そして、ベッドにそれまで無かった人の気配が生まれる。
その気配は、ベッドから起きだし、部屋の中を歩きまわり始める。
やがてつけっぱなしになっているPCの前の席に座り、モニターを眺める。
しばらくのち、細くてしなやかな手がマウスに伸び、少し移動させられた後にマウスが軽く2度クリックされた。
そして手はマウスを離れ、さらにもう一本の手が加わってキーボードへと伸び、慣れた手つきでキーがたたかれ始める。
ひとしきり何かを打ち込んだ後、その手は再びマウスへと移動し、一度だけボタンをクリックした後にマウスを離れた。
そして彼女は席を立ち、部屋を出ていった。
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>第7章 side-B
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