今週の荘子(2002.11.25-12.01)

 
魏王貽我大瓠之種。
我樹之、成而實五石。
以盛水漿、其堅不能自擧也。
剖之以爲瓢、則瓠落無所容。
非不■然大也。
吾爲其無用而掊之。
(略)
今、子有五石之
何不慮以爲大樽、
而浮乎江湖、
而憂其瓠落無所容。
則夫子猶有蓬之心也夫。

(逍遥遊篇)

 

    は、口偏に号で、「きょう」と読む。

 

魏王、我に大瓠(だいこ)の種を貽(おく)る。
我之を樹(う)うるに、成りて五石を實(い)る。
以って水漿(すいしょう)を盛れば、
其の堅(おも)きこと自ら擧ぐる能わず。
之を剖(さ)きて以って瓢(ひょう)と爲せば、
則ち瓠落(こらく)して容るる所無し。
■然(きょうぜん)として大ならざるに非ず。
吾其の用無きが爲に之を掊(くだ)けり。
(略)
今、子、五石の瓠有るに、
何ぞ慮(おもぱか)りて以って大樽と爲して、
江湖に浮かばず、
其の瓠落して容るる所無きを憂うる。

則ち夫子猶お蓬の心有るかな、と。

 

(恵子が荘子に言った)

魏王が私に大瓠(大きなひさご)の種をくれました。

私はそれを蒔いたところ、五石の大きさの実が成った。

飲み物入れに使うと、重すぎて持ち運びができない。

半分に割ってひしゃくに使うと、(底が浅くなるので)

すくってもこぼれてしまう。

馬鹿でかく大きいのだが、使いみちがなく、叩き割って

しまいました。

(略)

(荘子は恵子に答えて言った)

今、あなたは、五石もある大ひさごを持っていて、

どうして、大樽の舟として用いて、川や湖に浮かべず、

ひしゃくとして使い道の無いことを嘆くのですか?

やはりあなたには、こせこせとした心を持っている、と。

 

 

馬鹿でかいひょうたんがあったなら、あなたはどのように使う

か考えてみてください。

常識的な使い道を考えると、飲み物を入れたり、ひしゃくに

つかうことになりますが、これだと、中身が重過ぎたり、大きな

曲面の一部を使うので、底が浅くなって、液体がこぼれて、

使い道がありません。

荘子は、常識を忘れて、もっと自由な発想で使い道を考えれば

よいという。

似たようなことが、我々の身の回りに多いのではないでしょうか。

無用のものが、光を帯びてくる、夢を与えてくれる、そんなことが

考えられれば、試してみる価値があるでしょう。

 

 

注:

大瓠

ひさご、ひょうたん、夕顔。

 

    五石

石は容積の単位。

 

水漿

飲み物

 

剖之以爲瓢

剖は、二つに割る。

瓢は、ひょうたんを二つに割って作った柄杓(ひしゃく)。

 

則瓠落無所容

瓠落は、ぽたぽたと落ちる。

ひょうたんが大きすぎると、それを割って作ったひしゃく

は平っぺたになり、底が浅くなるので、水をすくっても

すぐにこぼれてしまう。実に論理的な分析をしている。

 

蓬之心

蓬(よもぎ)は、まがりくねっているので、そのような心は、

よもぎのように曲がりくねって、こせこせした心.

 

 

記:有無相生