今週の荘子(2001.5.13-5.19)

野馬也、塵埃也、生物之以息相吹也。
天之蒼蒼、其正色邪。
其遠而無所至極。
其視下也、亦若是則已矣。
(逍遥遊篇)

野馬や、塵埃や、生物の息を以って相吹くなり。
天の蒼蒼たる、その正色か。
其の遠くして至極する所無きか。
その下を視るや、亦是の若きならんのみ。

かげろうが立ち上り、塵が舞い上がるのは、
生きとしいけるものがお互いに息を吹きあうからである。
空が青々としているのは、本来の色なのか?
無限に遠いためなのか?
空から見下ろしても、青々と見えるのだろう。
 

「空は何故青いのか?」をWEB検索で調べてみた。
結論を言うと、荘子は、この質問に答えている。
人類史上初の宇宙飛行士ガガーリン大佐は、地球周回する宇宙衛星のなかから、
地球を眺め、「地球は青かった」といった。
宇宙から見下ろしても、空は青いのである。
まさしく、「その下を視るや、亦是の若きならんのみ」であった。

青く見えるということは、青い光が目に飛び込んでくるということである。
太陽の光(透明である)には、緑・藍・紫・青・黄・橙・赤の虹の色が含まれていて、
波長の一番短いのが紫色で一番長い波長が赤色である。
太陽光線が大気を通過するときに、大気中の目に見えない水蒸気やチリ(光の波長より充分小さい微粒子)にぶつかって、いろいろな方向に飛んでいく(物理のことばでレーリー散乱という)。 中でも波長の短い藍色や紫色、青色が散乱しやすく、空に散らばることから、空が青く見えるそうだ。

もちろん、青い光はすべての方向に散乱されるので、宇宙から見ても青く見える。
青い光を散乱する微粒子を空に撒き散らすのが、空気の対流であるかげろうであり、微粒子はまさしく塵埃である。 そして、空気を作ったのは生物圏であり、生きとし生けるものであった。 空を青くしているのは、実は生命の営みといってもよい。
地球が生きている証拠が、「地球は青い」ということになる。
荘子は、このことを知っていたのかも知れない。

記:有無相生